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それぞれが馴染む、多様な居場所があってほしい。地域にDAOを取り入れることでつながる良い未来。

信州大学の3年生で、今マレーシアに留学中の高橋 幸一さん。
現役の大学生ながら、Terminal DAOではメインメンバーとして活躍し、ローンチに向けて主体的にメンバーを巻き込んでプロジェクト進行をしています。

そんな、高橋 幸一さんに、マレーシア生活の話、塩尻に行って感じたもの、DAOに関わっていく想いなど、お話を伺いました。

【プロフィール】
高橋 幸一(たかはし こういち)
信州大学 工学部 水環境・土木工学科 3年生
マレーシアに1年間留学中。
Terminal DAOではDesignチームを担当。


じっとしていられないので、マレーシアへ留学。

――自己紹介をお願いします。

信州大学 工学部 水環境・土木工学科 3年生の高橋 幸一です。
今、マレーシアに1年間留学中で、あと5ヶ月ほどマレーシアに滞在予定です。
僕、じっとしていられない性格なので、いろんなところに行ったり、あちこち挑戦していきたいタイプの人間です。

――大学ではどんなことを学んでるのですか?

大学では専攻の土木を勉強する傍ら、同じことに集中できない性分なので、全然関係ない授業を取ったり、副専攻として、データを用いた戦略設計を行う、ストラテジー・デザイン人材養成コースが提供するプログラムに関わったり、長期インターンであらゆる企業に関わらせて頂いたり、海外行ってみたり、いろんなことをしています。

――なぜマレーシアに留学を決めたのですか?

自分の専攻は土木なのですが、迷いが出てきていて、数学や物理などの座学が多いんですね。それがちょっとつらいなぁっていうところがあって。
僕はいろんなことを勉強するのが好きで、やっぱり体動かして勉強したいと思い、マレーシアに留学しました。
新たな学びにチャレンジしたい想いがあり、留学を視野に入れていたんですけどね。

マレーシアは多様性豊かな街で、いろんな人種の方が住んでいます。
インド系、マレー系、中華系など、多様な街になっていて、どうやって共存してるのか、逆にもしかしたら分断のようなものが起きているかに興味があって、そういうのを見たいなと思い、マレーシアにしました。

――マレーシアではどんなことを学んでるのですか?

マレーシアの大学で勉強してる科目は、文化人類学などを勉強していて、日本の大学で勉強していた土木系とはあまり関連性がないものを学んでいます。
これは大学の講義じゃないところで気づいたことなんですけど、学校って意外と人種で分かれている印象で。
例えば、マレー系の友人が、大学に入ってから初めて中華系の人と友達になったって言ってて。
マレーシアでは、宗教的な背景から、人種ごとに学校や教育が分けられていることがよくあって、意外と混ざらないシステムになってるように感じて、凄くおもしろいなと。
あと、マレーシアには宗教もいろいろあって、イスラム教、仏教、ヒンドゥー教などたくさんある中で、モスクや寺院など、宗教的建造物と人がそれぞれ共存しているのを見て、文化に基づいた街づくりになっているのが面白いなと感じました。

人種はバラバラですが、互いに強く干渉し合わず、のんびり寛容に生きている人が多くて、「Boleh (訳:いいよ~、大丈夫だよ)」が口癖のマレーシア人から学ぶことが多いです。

マレーシアのモスク

――マレーシアに住んで、驚いたエピソードはありますか?

まあ、基本的にどれも想定内だったと言えば、想定内だったんですけれど(笑)
すごく衛生環境が悪いです。
ウォシュレットが当たり前のトイレとかの生活に慣れてきてたので、マレーシアに来て、ゴキブリやネズミがたくさん湧くようなトイレを使ったり、シャワールームもそんな感じなので、それに耐えなきゃいけないのが鬱でしたね。

あと、僕はイスラム教の人と関わることが多く、イスラム文化にかなり触れてるんですね。モスクに行って実際にお祈りさせて頂いたりとか。
あと、今『ラマダン』っていう時期で、イスラム教徒の人はこの間、日の出から日の入りまで1カ月間、断食をしなきゃいけないんですよ。
水も飲んじゃダメ、食べ物も食べちゃ駄目っていうもので。
そういう文化が凄く根付いていたり、日本じゃ考えられないようなことをやっているところに凄く衝撃を受けました。

ちなみに、僕も今断食チャレンジしてるんですけど、いま6日目です。
本当にきついです。
断食してるとちょっとイライラしますね…(笑)
食べることが何よりもの生きがいだったので…
なんか早く飯食いたいなって思うんですが…いや、でも本当にそうらしくって、マレーシア人は食べることが好きなので、この時期は食べれず、イライラする人が多いから気をつけましょうって言われるくらいなんです。

駅に人が居ない…リアルの塩尻に気づきました。

――塩尻に関わりを持ったきっかけは何だったんですか?

大学の授業で関わったのがきっかけです。
信州大学は塩尻と関係が深いので、かなり塩尻関連のイベントが提供されているんです。

僕は、データを使って戦略設計をするコースに所属していて、そのコースでは、インターンとしていろいろな地域や企業に関わったり、新規事業立ち上げのアイディアを出したり、挑戦するコースなんですが、その中で塩尻のイベントや、NPO法人MEGURUが提供するインターンシップの紹介をしてて。
その中で、ノーコードでアプリ開発するインターンシップに関わらせていただいて、そのときに横山さんと知り合いになったんです。
そこから、授業で塩尻に行くことがあって、関係性も深くなって…どんどん塩尻沼にハマっていきました(笑)

――初めて塩尻に来たときの印象はどうでしたか?

大学の授業で塩尻は何かすごいところだと授業で扱っていて、イベントがかなり開催されているのを目にしてきて、たくさんのプロジェクトが立ち上がっているのも散々聞いてきたので、活気がある印象で。
ものすごく挑戦して、いろんな事業を立ち上げてるみたいなことを聞いてたので、すごく活気ある街なんだろうなっていう固定観念が勝手に出来てて。

でも、実際行ってみたら、駅に着いて外に出たら誰もいないんですよ。
でも、初めて塩尻駅に着いたとき、駅前ロータリーに誰もいなかったのが、衝撃的でした。
「全然活気ないじゃん!!」ってツッコミそうになりました。

まじでびっくりして、全然じゃん!と思ったので、大門商店街の方にも行ってみたんですが、結構閑散。
行ったのは確か土曜日だったんですが、すごく閑散としてて…
時間帯が悪かったのか、商店街のあたりも人がまばらで、びっくりしました。

始めて塩尻駅に降り立ったときの風景

何か塩尻も塩尻で、どこにでもあるような地域の一つなんだなって言うところを、実感して、自分の認識とのズレが分かって…
だからこそ、リアルの塩尻に気づけました。
塩尻も特別ではない、とある地方の1つだったんだなと。
どこの地方もおそらく抱えている課題は同じなのかもなと。
でも、だからこそ、ものすごく活性化とかにチャレンジしてるんだろうなっていうのがわかって。
塩尻を盛り上げたい人が集まって、挑戦を繰り返し、多くの関係人口を巻き込んでいることに、素直に感動しました。
そこでようやく塩尻の凄さに気づいたっていう感じです。

――なぜ塩尻CxOLabに参加しようと思ったのか?

大学の授業で、塩尻へフィールドワークに行き、そこで感じたことをもとに、新しい事業を提案する授業があったんですけど、そこで僕がDAOについての新規事業提案をしたんです。
DAOは塩尻とすごく相性がいいんじゃないか?まちづくりに相性がいいんじゃないか?という提案をしている中で、たまたまのりしおを見ていて、そこで塩尻CxOLabというものがあることを知りました。
そして、テーマオーナー保延さんのNFTを活用した関係人口創出のお題を発見して、同じことを考えている人がいる!と思って。
自分と同じ考えの人を見つけて、本当にびっくりしました…!
これ入りたいなと思って、「あの、ちょっと僕、チャレンジしてみたいんですけど、いいですか?」という感じで、横山さんに直接お声掛けさせていただいて、塩尻CxOLabに参加しました。

地域規模で民主的な意思決定を進めていくことが、良い未来につながっていく。

――なぜ、「塩尻DAO」に関わりたいと思ったのですか?

「塩尻DAO」のプロジェクトに関わっているのは、もともと、DAOの思想に興味があって。
すごく思想的な話になるんですけど、DAOは民主的な意思決定っていうところを重要視していて。
一方、国単位で民主主義を見たときに、アメリカや、最近はインドネシアなどが、いわゆるポピュリズムのようなものに陥ってしまう時期があって。
大衆にとって親近感が湧く演説をした人が国のトップになるって、すごいマズいことなんじゃないかと思ってて。
そして、トップに影響力や権力が強い状態が維持されてるってのもおかしいなあって感じてて。
さらに日本を見たときに、日本はそもそも政治に関心を持ってる人がすごく少なくて、自分事として政治を捉えることができないっていうのが問題なんじゃないかと思っているんです。

本来、民主主義って『参加と責任のシステム』ってされてるんですよ。
参加と責任のシステムっていうのは、自分で社会課題に関心を持って、参加して責任を持つと。
そこで政府に対しても責任を追及し続けるのが本質的なところであると思うんですけれど、それがうまく機能されてないのはどういうこと?って考えたときに、今の民主主義が規模として大きすぎるんじゃないかと考えたんですよ。
いわゆる、国民が国単位のことを考えるのはすごい難しいことだなと思ってて。
でも、家庭のことならすごく理解できる。
家庭のことについてなら、引っ越しや結婚についてなら、当事者意識や責任を持ちやすいじゃないですか。
分解することって結構大事なことで、例えば、国単位で日本の教育をどうすればいいか分かんないですよね。
だから、自分の責任や関心を持ちやすい地域にまで、民主主義の規模を落としたほうが良いんじゃないかという感覚がして。
近くの小学校の教育をどうするかだったら、もしかしたら子供がその小学校に入るかもしれないから、その学校の教育について考える意義はあると思い、みんな参加しやすいシステムなんじゃないかと思ってて。
だからこそ、地域にDAOは相性が良いのではと考えているんです。
地域の人が主体的にDAOに参加して、フラットな関係性をもとに、活発に議論が進んで、貢献してくれた人には報酬としてトークンが与えられる。
そして、社会課題に参加する人が地域単位で増えていき、民主的な意思決定を進めていくことにすごく可能性を感じるというか、良い未来なんじゃないかと思っていて。

それを実証実験したい。
地域のつくるDAOに入って、DAOがどのような性質を持つかしっかりと見直してみたい。
そういう想いで、DAOプロジェクトに参加しています。

もう一つは純粋に株式会社という一辺倒の組織構造に風穴を開けたい。
自由にフラットに自分らしく関わっていられるDAOのような組織があってもいいんじゃないか?もっと働き方は多様でいいんじゃないか?と思い、地域事業者のプロジェクトごとに関わって働ける「塩尻DAO」が、未来のDAO的な働き方になるかもという期待があり、関わっています。

塩尻のブドウ畑からの風景

――「塩尻DAO」に関わって感じる楽しさは何ですか?

多様性です。
DAOって多様性が大事だと思っていて、いろんなバックグラウンドを持つ人と関われることに強く価値を感じています。
自分の認知している世界観が広がる感覚がして。
どうしても同じ年代とか関わってしまいがちなので、違う年代の方々と関われる体験は貴重です。

――「塩尻DAO」に関わって感じる難しさは何ですか?

DAOは貢献度合いが個人に依存するので、思ったように進まない、どれだけの熱意を持って取り組んでいるのかのすり合わせが非常に難しいです。
足並み揃えて、同じ進捗で仕事を進めづらいのが難しいところですね。

あと、DAOの定義が人によって全然違うので、そのすり合わせもすごく難しいなと。
最初のうちは独裁的に意思決定進めていった方が早く進むけれど、いかに多様な意見を取り入れていくかは難しいところだったり。
会社であればお給料もらってるので、最低限の仕事をするので進みやすいのですが、DAOでは関わり度合いは本人の自由で、グラデーションが大きいので、仕事の進み方が一様じゃないのが難しいです。 

今は、ローンチ前の準備段階で、本当は多様な意見を取り入れたいところですが、意思決定を早めに進めていくために、熱量ある人が意思決定を進めていく状況になっています。
むしろ、そのほうがローンチ前は早く進むのでいいのですが、どこまでDAOという思想に拘って、どこまで民主的にするのかも難しいところです。

自分のアイディアをめちゃくちゃ通してくれる。塩尻には挑戦を受け入れてくれる土壌がある。

――「塩尻DAO」に関わって感じるやりがいは何ですか?

いろんなことに挑戦させてくれるということがやりがいです。
塩尻の土壌に共通する部分があると思うんですが、挑戦を受け入れてくれる土壌がいいなと思って。
それもあってか、自分のアイディアをめちゃくちゃ通してくれるんです。
出した案がさくっと通ってしまって驚いています(笑)
自分が出した案が通るとなると、愛着が湧いてきてしまうので、それが自然にやりがいになっていますね。

今まで大学で新規事業の提案に何度か挑戦したんですけど、結局、企業のフィードバックだけで終わって、その先どうするかに一切関われないことが多くて。
企業がどうするか状況が聞けないので、そこからどうなるんだろうってモヤモヤしてたんです。
だからこそ、自分のアイディアが通ったときの快感はものすごいですよね。
それがやりがいになるなと。

世の中にたくさんの選択肢があって欲しい。

――こういちくんが考える「塩尻DAO」の提供価値とは何だと思いますか?

DAOの定義は、Visionに共感した仲間が集まってできる組織なので、提供価値はあらかじめ用意されているというより、みんなで作り上げていくものだと考えています。
Visionや提供価値について喧々諤々と議論したり、ときにはゆるく雑談したり…その時間と関係性そのものが価値かなと思っています。

また、「塩尻DAO」は、地域のプロジェクトに参加して報酬を得られる形が、将来的に副業をたくさん掛け持ちする働き方に近い気がしていて、自分がやりたいことを真っすぐ実現できる働き方にすごい近づくんじゃないかなと思って。
今まで会社で働くことしか見えていなかったけれど、自分らしく働ける、働き方の多様化に貢献できることが提供価値ではないかと感じてて。

世の中にたくさんの選択肢があって欲しいんですよ。
自分が生きやすいものを自分で選択できる世の中になって欲しいという想いがあるので、それに役立つのが「塩尻DAO」ではと思ってます。 

それぞれが馴染む、多様な居場所があってほしい。DAOもその選択肢のひとつ。

――最後に、今後目指すもの、目標、将来の夢を教えてください。

正直、わかんないです(笑)
とりあえず、大学院に入って都市計画を学びたいです。
DAO×地方×民主主義のような実験をしてみたいなと。

あと、人間に淘汰され続けてきた生物に視点を持ち、生物と住む人間がどれだけ幸福を享受できる都市を想像できるかにすごく興味があって、研究したいです。

でも、ふらふら寄り道の多い人なので、どうなるかわかんないんですよね。
よく目標を立てるんですけど、全部頓挫してるので(笑)
結局ふらふらして、出会った人の縁に助けられた日々だったので、そこに頼って今後も生きていくんじゃないかと思ってますね。

一方、個人的な軸として、僕は変な人なので、あまりうまく社会に馴染めない。
けど、そういう人や生物はたくさんいると思ってて。
だからこそ、それぞれの人や生物に馴染む多様な居場所があってほしい。
DAOもその選択肢のひとつで、どれだけニッチでも、心地の良い空間が多様な形で共存している。
ボーダーレスでなくていい。
居心地のいい空間として、ボーダーはあってもいいけど、せめぎ合わず、いつでも入れるようなバリアフリーな社会であってほしい。
そんな社会をつくれたらと思っています。

取材日:2024年3月17日
(取材・構成/助川 富美恵)

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