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人と関われるからこそ関係人口。人と人との繋がりを可視化できる「塩尻(Shiojiri)DAO」の可能性

関係人口として、様々な地域と繋がり活動を行う助川富美恵さん。「塩尻CxO Lab」への参加をきっかけに塩尻に関わり、現在は自律分散型オンラインコミュニティ(DAO)の立ち上げプロジェクトにPRチームの主導役として参加しています。

色々な地域で活動してきた助川さんの視点から見た関係人口が地域にもたらす可能性や、ご自身の地域活動へのモチベーションの源泉についてお話を伺いました。

【プロフィール】
すけがわ・ふみえ
埼玉県草加市出身。東京都在住。あだ名はすけさん(個人談9割シェア)
2017年4月株式会社メンバーズというウェブマーケ支援企業に新卒入社。ウェブ広告→SNSの中の人→経営企画を経験し、今に至る。2023年8月にメンバーズを退職。2022年、能登ローカルシフトアカデミーに参加したことで人生観が変わり、地域活性化を本業にしようと決意。今後は『地域の魅力発信をし、人を呼び込む』をミッションに、現在はフリーランスとして複数の地域に飛び込み、ウェブマーケティングを武器に副業×副業のワークスタイルで場所にとらわれない活動をしている。


温度感とタイミングがマッチして「塩尻CxO Lab」に参加

――塩尻と関わりをもつようになったきっかけは何ですか?

塩尻はワインの産地ということで名前を聞いたことがある程度でした。関わりをもつようになったのは、塩尻市の関係人口創出プログラム「塩尻CxO Lab」の活動に参加したのがきっかけです。

塩尻CxO Labは、地域のプレーヤーが抱える課題を解決するための方向性を示す”仕様書”を一緒になってつくるところから始まり、さらに副業人材/プロボノとして課題解決に伴走するステップにつながっていく構成となっています。ミッションを与えられて最後にプレゼンコンテストをして終わり、というようなよくある地域系のプログラムとは一線を画した、自ら作り上げていける、次のアクションへつなげていけるところに魅力を感じました。

「塩尻CxO Lab」のメンバーと。塩尻市「えんぱーく」屋上にて

ガチガチのビジネスライクな雰囲気ではなく、かと言って、ふわっと終わってしまうわけでもなく、ちょうどよい温度感で、自分にマッチしそうだと感じました。

塩尻CxOLabのメンバー募集記事を見つけたのは、別の市町村で地域創生のプログラムに参加したことをきっかけに、もっと色んな地域を知りたい、開拓したいと思って動いていた時期でした。ちょうど、仕事を辞める直前でフリーランスとして地域系の仕事をしたいと考え始めていたこともあり、タイミング的にもマッチしていたんだと思います。

塩尻の魅力は「受け入れ力」。新しいことにチャレンジできる場所

――色々な地域に関係人口として関わっている助川さんですが、他の地域と比較して、塩尻の魅力・特徴はどんなところだと思いますか?

塩尻は、新しい取組みをしている地域という印象を受けました。学ばせていただける要素がたくさんあるな、と。

塩尻は、私がこれまで関わったことのある過疎地の集落などと比べると、そこそこ人口もいて産業もあり、首都圏からのアクセスも比較的良い。なんとかしないと立ち行かなくなってしまうといった逼迫した状況ではない中でも、そこにある資源やそこで暮らす人の生業を活かす方向で新しいことに積極的にチャレンジしている地域という印象を受けました。マイナスをどうにかゼロに持っていくことに始終するのではなく、何かしらプラスのものを生み出していこうとする前向きなエネルギーを感じました。

また、関係人口である自分から見た塩尻の面白さは、関わりしろの幅広さだと思います。シビック・イノベーション拠点「スナバ」を始めとして、「塩尻ワイン大学」であったり、首都圏の企業を誘致してコラボレーションを推進していくDXセンター「Core塩尻」など、さまざまなジャンルの地域外人材を受け入れる体制があると思います。”受け入れ力”があるというか、地域内外を繋ぐ役割の人がいて、チームができて運営が回っている感じがあります。他の地域でも同様の取組をやろうとしている所は多いですが、役所の人が限られたマンパワーでなんとか回しているものの中途半端に終わってしまっている、という事例もよく見ます。

塩尻でのフィールドワークの様子。
「塩尻ワイン大学」や「塩尻ワインサークル・コミュニティヴィヤード」など地域外の人が参加できるワイン関連の活動もたくさんある

観光客でも移住者でもない「関係人口」が生み出す可能性

――塩尻CxO Labのプログラムが終了した後も、「塩尻DAO」のファウンダーとして引き続き塩尻のプロジェクトに関わっているそうですね。継続して関わろうと思ったのはなぜですか?

塩尻CxOLabでは「NFTを活用した自律分散型コミュニティの創出」というテーマでプログラムに参加しました。ただ、1ヶ月という短い期間のタイミングで思っていたよりコミットできず、消化不良感が残ってしまいました。

今回の「塩尻DAO」は、塩尻CxOLabで議論してきたことを形にするプロジェクトです。面白いと感じて参加したこのテーマにこの先も関わり続けて、今度はもう少しコミットしていきたいと思い、ファウンダーに手を挙げました。

また、色々な地域の事例を学びたいと思っていたので、先進的なDAOの取組から他の地域に紹介できるヒントが得られるのではないかと期待しています。このプロジェクトに参加することでもっと塩尻に深く関わっていくことができるのも面白そうだと思っています。

――「塩尻DAO」への期待感を教えてください。

自分自身が関係人口として地域に関わることの魅力に取りつかれて色々な地域を訪れる中で、観光客でもなく移住者でもない立場の人がもっと増えていけば、地域が良い方向に変わっていくという可能性を実感として感じています。

地域活性化に興味を持つきっかけとなった能登での活動の様子

例えば、その地域を訪れてただ観光して帰るだけでなく、人と知り合ったり、地域の課題解決に関わったりする体験を経て、その土地に愛着がわき、好きな人、また会いたいと思える人が増えていく感覚があります。この地域が好きだから住みたい、そこに住む人のために何かしたい、と思う人が増えていくことは、地域にとってシンプルに良い変化をもたらすはずです。

どの地域でも関係人口創出にあたって、関わりしろの可視化というのが課題になっていると聞きます。「塩尻DAO」は、テクノロジーを用いて様々なことが可視化できる仕組みがつくれるのが面白い点だと思います。
自分がその地域で取り組んだことや経験が認められて、関係人口としての何らかの証明書が得られるというのは、地域に関わるモチベーションになります。○○観光大使になりました、というのと近いかもしれないですね。

自己紹介などで、地域でこんなプロジェクトやってます、という話をよくするんです。その話ができること自体が単純に嬉しいんですね。

今の世の中、会社で仕事してるだけでなく、自分の興味に応じて色んな活動をしている人が増えています。一昔前は「○○会社で働いてます」と自己紹介するのが普通でしたが、今は、「地域でこんなプロジェクトやってます」と言うことで、自分がどんなことに興味があって、何をやっている人間かを伝え、興味のある分野で人とつながったり、仲間を見つけたりする時代になってきていると思います。自分のやっていること/やってきたことが可視化され、その証明が得られることはDAOの魅力の一つだと思います。

”やりたい”を起点に始まるプロジェクトを推進する楽しさと難しさ

――DAOではどんな役割を担っていますか?楽しさややりがいは何ですか?

広報チームとして、ファウンダーメンバーのインタビューを行って記事にまとめたり、今度はラジオチャンネルを立ち上げる予定です。

仕事仲間としてではない関わりのメンバー同士でわちゃわちゃ一緒に物事を進めていくのが楽しいですね。

メンバーとのオンラインミーティングの様子

今回「塩尻DAO」のラジオチャンネルをきっかけに、私個人としてもラジオをやってみようかなと思っているんです。駅中にあるローカルなお蕎麦屋さん情報とか、塩尻ネタを発信する「塩尻回」で様々なローカルネタをラジオで紹介するのも面白そうです。こうしてみんなでワイワイ話していうちに自分一人で思いつかないようなアイデアが出たり、新しいことにチャレンジするやる気がわいてくるのが良いですね。

――プロジェクトを推進するにあたって、難しい点はありますか?

プロボノとして入っているので、(収入を伴う)仕事と重なった場合はどうしてもそちらが優先となるので、後回しになってしまいます。

会社員の時は、昼間は本業に充ててベースの収入を得つつ、帰宅後の空き時間で自分の興味のある地域活動などに取り組むというスタイルで関わっていました。ところが、フリーランスになってからは、たくさんやることがある中で何を優先していくかを常に問われる状況になりました。限られた時間を何に費やすかの選択はシビアになりましたね。

――その中で優先度をあげて関わろうと思えるかどうか、モチベーションの維持が難しそうですね。

そうですね、関わり続けるモチベーションは人によって違うと思います。プロジェクトメンバーの熱量とか、方向性・価値観に共感できるかとか、儲かるのか、とか・・・

「やらなければならない」からやる仕事ではなく、「やりたい」を起点として始まっているプロジェクトなので、強制力はないわけです。関わる人のモチベーションコントロールに工夫が必要なのは確かですね。

ただ、今はみんながいろいろな活動をやっている時代になってきているので、一つのプロジェクトにずっとコミットし続けることを求めるのは無理があると思うんです。環境や事情が変わって離れていく人がいても良いと思います。出ていく人がいれば入ってくる人もいて、新陳代謝を繰り返しながら循環していく方が健全にコミュニティを持続させていけるのではないかと思います。

人と関われるからこそ関係人口

――今後、塩尻とはどんな形で関わっていけそうですか?

今後「塩尻DAO」の中で色々なプロジェクトが立ち上がっていくと思うんですが、自分もそのプロジェクトの運営として関わってみたいですね。決められたプログラムに参加するだけの一過性の関わりではなく、地域との関係性を継続的かつ深いものに発展させていけそうだと期待しています。

継続的に深く関わり続けるポイントは、やはり人だと思います。この人に会いに行きたい、という人が何人いるかでその地域への愛着度が変わります。その空気感をどう醸成できるかが、コミュニティ構築のポイントかもしれないですね。

関わっている地域を訪れて、道を歩いていて地元の人に声をかけられたらもう「仲間入り~!」、みたいな(笑)。もうそうなったら、その地域に「行きたい」、ではなくて、「行かねば」という使命感に近い感じになります。

関係人口という言葉は、行政がつくった都合のよい用語ということでネガティブに捉えられることもあるんですが、私は、”人と関われるから関係人口”、とポジティブに捉えています。

これからも塩尻の関係人口として、深く継続的な関係を築いていけたら嬉しいですね。

(取材・構成/上田 直子)

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