見出し画像

なぜ人間はいきもののようなかたちをつくるのか

≪塩尻アーティスト・イン・レジデンス特集≫
ANAによるアートプロジェクトANA meets ART "COM"の一環として、2020年より行われている塩尻アーティスト・イン・レジデンス(塩尻AIR)。
この特集記事では、2021年、塩尻に滞在しながら制作活動やリサーチ活動を行った4人のアーティストと地域の関係者にインタビューを行い、アート×地域の未来の関係性を探りました。

2021年度 ANA meets ART “COM”
https://www.ana.co.jp/ja/jp/domestic/promotions/ana_art_com/shiojiri/
Instagaram:  https://www.instagram.com/ana_art_com/

東京の浅草育ちの箕浦建太郎さん。
いきもののように見えるモチーフの絵を描き続けてきた。
彼は、この塩尻でのレジデンスを通して、塩尻市立平出博物館や丸嘉小阪漆器店とともに作品を制作している。

―― 塩尻での滞在はいかがでしたか?

(箕浦さん)塩尻には平出遺跡があります。遺跡があるということは、そこに人の営みがあったということ。多分遺跡のある場所は本来人間が暮らしやすい場所です。

信州では黒曜石が多く採集できます。黒曜石は割ると鋭い断面になるので縄文時代より、ナイフや鏃(やじり)として狩りなどに使わてきたといわれています。僕は人の営みや縄文時代や土器や土偶に興味があり、アーティスト・イン・レジデンスが決まったときに、平出遺跡と平出博物館に行きたいと思いました。

―― 平出博物館は塩尻に足を運ぶ前からご存知だったのでしょうか?

(箕浦さん)平出博物館の名前は本などで収蔵品と共に知っていましたが、実際に行ったことはありませんでした。
土器や土偶は、何千年も前に作られたものです。その中に強烈に人間らしい部分があって、親しみやすさを感じる。いきものの匂い。
そこが自分の作品に通じるのではと思います。かたちが具象だったり模様が抽象だったり逆もで、その混じりあう絶妙な着地点。
 
―― 土偶のようにも見える作品を、レジデンスを通して作っていらっしゃいます。平出博物館とはどのようにコラボレーションをしたのでしょうか?
 
(箕浦さん)僕は美術館や博物館が好きなのですが、博物館はその土地や歴史、人の営みを追体験できるのでとても刺激をうけます。
平出博物館では作品制作と発表という機会を得ることができました。収蔵品をたっぷり時間をかけてみて体に馴染ませたり、館長の小松さんをはじめ専門家の土器や土偶の詳しい話が聞けて交流もできました。
信州での縄文時代の焼成方法を調べ自身の手を動かして作品をつくりました。

―― 他にも塩尻でコラボレーションが始まったりしているのでしょうか?
 
(箕浦さん)丸嘉小坂漆器店にも足を運びました。丸嘉小坂漆器店は、ガラスに漆を塗った器も制作しています。
漆は最古の絵の具とも言われており縄文時代とも親和性があります。画材として興味があるけれど、漆はかぶれるしでどう扱って良いのかわからずにいました。

そんなことを思っていると、しおじり街元気カンパニーの藤森さんが小阪さんのところに案内してくれました。
漆の歴史から現代までの流れ、民藝など様々な話をし、自然にコラボレーションが始まりました。ガラスのお皿に筆で漆を使って絵をかかせてもらい100枚位はかいたと思います。継続して作業に行く予定です。

漆は顔料を混ぜる事も出来るのだけど、漆本来の色もとても綺麗です。透明なガラスにかく事で透けるのでで、いっそうひきたっていきます。この作品はいつか東京など塩尻以外でも見せることができたらよいのではないかと思います。丸嘉小坂漆器店のガラスに漆という技術は独自に進化していて本当に凄いと思います。
 
―― 塩尻での繋がりが広がりますね。
 
(箕浦さん)はい。しおじり街元気カンパニーの藤森さんと塩尻の空き家もいくつも見に行きました。
中山道など江戸時代の名残りも随所で色濃く残っていました。空き家は台所や寝室がそのまま残っていたり、近年の人の営みがリアルすぎる程伝わりました。人口減少と空き家は具体的に問題になってきています。
そういった視点でも縄文時代から現代までの人の営みやうつろいを研究し、対策とる事はとても大事だと思います。
 
―― アーティスト・イン・レジデンスでよかったことは何ですか?
 
(箕浦さん)1年目は通しで長く滞在制作しました。2年目は細かく何度も通って、1年目とは違う学びがありました。やはり継続が大切だなと思っています。

例えば、洗馬というところには、本洗馬歴史の里資料館・釜井庵があるのですが、とても興味深い歴史があります。時間をかけて調べ周囲を歩いたりした事で納得できました。
土地や歴史を紐解いていくには、時間とお金と体力がとてもかかるのだど体感出来ているのはよかったことです。あと2年目は信州全体のリサーチも同時に進める事が出来たのは幸運でした。
 
―― 塩尻はアーティスト・イン・レジデンスに向いているとおもいますか?
 
(箕浦さん)全ての場所にはその土地の物語があります。アーティスト・イン・レジデンスはどこで行うことも可能だと思います。
塩尻は東京から近いのに標高が高く、空気がこれだけ綺麗。実際行って見ると、思いがけない景色もたくさん広がっていました。

―― 自分にとってアートとは何ですか?
 
(箕浦さん)難しい質問ですね。僕は毎日絵をかいていると落ち着きます。土器や土偶は何千年も前に人の営みの中でつくられていて、目的や動機など不明なまま時間を超え目の前にあります。そういったことがとてもおもしろいと思います。

▼交流した地域の人:

箕浦 建太郎
みのうら・けんたろう / 画家。
1978年浜松生まれ浅草育ち。常に絵を描き続けている。個展、グループ展や本、レコード、洋服、インターネットなどで作品を発表。著書には『未完成大陸』、『Decapitron3』(SHOBOSHOBO-BOOKS)、写真家の川島小鳥との共著作品集『明星』、『トリコ』(東京ニュース通信社)、『Hello,Good』『TOURS』など。未発表作品多数。山梨県在住。

HP http://minourakentaro.com/

(取材・構成/ヒロイ クミ)



みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!