目指したい組織の在り方を実践で学びたい。自律分散型組織への興味から塩尻DAOに参加。
東京と塩尻の二拠点生活を送りながら、塩尻の『地域の人事部』の一員として人事支援の事業に取り組む長南雅也さん(通称:ちょなんさん)。自律分散型組織への興味から、今年5月にスタートした塩尻DAOに参加しました。
塩尻に関わるようになったきっかけや、塩尻DAOに期待すること、これからやってみたいことなどについてお話をうかがいました。
【プロフィール】
ちょうなん・まさや
茨城県潮来市育ち、長野県塩尻市と東京都府中市で二拠点生活中。
現在は、NPO法人MEGURUにて、塩尻人事コミュニティ『えんべーす』運営や、法人向け新規事業開発を。フルリモートでFinTechサービスのプロダクトマネージャーを。これまでにIT業界でWebエンジニア/UXデザイナー/データアナリストに取り組み、HR業界では人材開発や組織開発に取り組む。認定ワークショップデザイナーで、ワークショップの専門は対話と作品鑑賞。マイパーパスは「もっと人間らしく生きる」
「地域の人事部」のイベント参加をきっかけに塩尻とのご縁がつながる
ーー 塩尻と関わるようになったきっかけを教えてください。
昨年末にNPO法人MEGURU(以下、MEGURU)のMEGURingというイベントに参加し、そこで塩尻の方々と知り合ったのがきっかけです。
私はもともと、IT業界でエンジニア、UXデザイナーなどWebサービスやアプリケーションを立ち上げたり育てる部分に特化したキャリアを歩んできたのですが、その後、人材開発系のコンサルへの転職を経て、IT企業の所属部門内の人事支援や組織開発などに関わるようになりました。
そんな中『地域の人事部』という取組みを知り、興味を持って色々調べていた時に、塩尻で地域の人事部を立ち上げて活動しているMEGURUを知りました。代表の横山さんから興味を持っていただき、私の方から提案した人事支援の新規事業が動き出すことになりました。今は毎月1回塩尻に1週間ぐらい滞在しています。
組織を変えるには、地域社会への働きかけが必要。組織開発との関連性から地域での活動へ
ーー 地域での活動にもともと興味はあったのですか?
地域活動にはもともと興味があり、これまでも関係人口として富山県の南砺市や島根県の海士町などの地域と接点を持っています。
地域に関わることに興味をもち始めたのは、自分が仕事で関わっている組織開発の分野との関連性を感じたからです。組織開発とは、従業員自身が組織をより良くしていく活動を促していくことですが、私はそれは即ち、組織という社会での社会参画をどう促していくか、だと認識しています。
組織開発を行う中で、なぜみんな自分の部署のことだけを考え、組織づくりに関わろうとしないのか?と疑問を抱くことが多々ありました。その疑問は、日本人はそもそも社会参画できているのだろうか?という疑問に繋がっていきました。投票率も低いし、地域社会やコミュニティとの繋がりをもたず、自分の家だけが良ければいいと考え、社会がどうなろうと関心がない人が多い。
会社の中で起きていることと地域社会全体で起きていることの根っこは実は同じで、当事者として自分が属する組織やコミュニティに参画していく姿勢の欠如に問題があると感じています。だから、組織を変えるには、地域社会への働きかけが大事だと感じるようになりました。
MEGURUは、『地域の人事部』として地域ぐるみで地域の問題を解決することや、個人の社会参画を促す活動を行っていて、それが自分自身のやりたいことに繋がっていると感じました。
関わりしろがたくさんあるのが塩尻の魅力
ーー 塩尻の魅力や特徴はどんなところだと思いますか?
他の地域と比較して、塩尻には”関わりしろ”が多いと感じます。例えば、シビック・イノベーション拠点スナバでは、新メンバーと既存メンバーをつなぐイベントが頻繁に開催されていたり、イベントの運営のお手伝いを募集していたり、地域の祭りへの参加のお誘いがあったりと、手をあげればいくらでも参加するきっかけが得られます。
私も自己紹介イベントの機会をいただき、そこでワークショップ体験を通して自己紹介をする場をつくったら、色々な人からワークショップの依頼をされるようになりました。関わりしろがたくさんあって、いつのまにか巻き込まれている、そこが塩尻の良さだと思います。
東京から特急あずさで2時間半という行き来のしやすい距離感も良いですね。そして、もう一つの魅力はやはりワインです。私はワインがお酒の中で一番好きなんですが、その土地ならではのテロワールがあること、ワインの香りで土地の魅力を伝えられるというのは素晴らしいと思います。
自律分散型組織の在り方を実践を通して学びたい
ーー 塩尻DAOに参加しようと思った理由はなんですか?
自律分散型組織の在り方を実践を通して学べると思い参加しました。もともと組織開発の文脈で、ティールやホラクラシーなどに興味がありました。組織開発の担当がいなくても、組織が上手くいく世界を目指すのが自律分散型で、それが自分の目指したい組織の一つの在り方だと思っています。
塩尻DAOで新しい組織の運営の仕方を試して、それが上手くいけば、MEGURUや、他の組織でもそういう運営スタイルにシフトしていけるのではないかと期待しています。
ーー 塩尻DAOではどんな活動をしていますか?
7月に塩尻で行われた塩尻DAOのキックオフイベントで、ワークショップを担当しました。もっと関わりたい気持ちはあるのですが、タイミングが合わず、他のプロジェクトなどにはまだ関わりきれていない感じです。
今後は、自分でプロジェクトをつくっていったり、自分が他でやっているプロジェクトを塩尻DAOの中でも展開できるようになれば良いですね。長野県内で開催されるスタートアップ系イベントのオーガナイザーなども務めているのですが、開催の決まっているイベントでの仲間集めに塩尻DAOやスナバのメンバーを絡めていけると面白いと思います。
ーー 塩尻DAOの面白さはなんだと思いますか?
塩尻にいなくても、塩尻の中で起きている動きが見えるのが面白いと思います。いろいろな市民活動やプロジェクトが行われていて、常にオープンに仲間を募集している、そんな状況が東京に住んでいる自分からリアルに見えていて、現場の熱量やエネルギーをダイレクトに感じられ、塩尻を常に身近に感じることができます。
塩尻では、期間限定でがっつりと関わる地域課題解決プログラムなども行われていますが、塩尻DAOは、もう少しハードルが低くて、クラウドソーシング的にちょっとしたお手伝いやちょっとした関わりがしやすい場所だと思います。
アクションが起こりつづける状態をどうつくっていくかが今後の課題
ーー 逆に、難しいと感じることはありますか?
たくさんの役割やプロジェクトの繋がりがあることに慣れている人はいいと思うのですが、discordで常に色々な情報が飛び交っている状態をしんどく感じたり、参加できていないことに後ろめたさを感じる人が出てきてしまうかもしれません。Facebook疲れではないですが、塩尻DAO疲れ、みたいな(笑)メンバーそれぞれが無理をすることなく、自分なりのペースで継続して関わり続けられることが大事だと思います。
また、こうしたコミュニティではアクティブに活動するメンバーは大体3割程度という感覚がありますが、アクティブ非アクティブが固定することなく、誰もがタイミングによってアクティブと非アクティブを行き来するというような状態が理想です。みんなが年に一回は何かしらのアクションを取っているくらいの感覚です。
塩尻DAOの場合はまだまだ母数が多くないので、人の入れ替わりが起こりにくく、一部の人のみが頑張っていて、その人たちが他のことで忙しくなるとコミュニティの動きが止まってしまう可能性もあります。
全体の人を増やすことと、どう人と人をかき混ぜて、アクションが起こり続ける状態を作っていくかが今後の課題ですね。やりたい人がワーキンググループを立ち上げて、メンバー同士をかき混ぜたり、関わりしろをつくるといったことを自発的にやりはじめるようになると良いですね。
ーー 今後、塩尻とはどんな形でかかわっていけそうですか?
塩尻DAOでは、もともと興味のある自律分散型組織について改めて学びながら実践していきたいです。運営側のワーキンググループに参加して、コミュニティデザインの実践などを通して学んでいくことなどができたらいいなと思っています。
今後は、おためしナガノという制度を利用して、今までよりも頻度高く塩尻に足を運ぶ予定です。せっかくの機会なので、塩尻だけでなく、松本や長野市、安曇野、伊那などのエリアにも足を伸ばして、色々な人達と出会いたいと思っています。マイパーパスを「もっと人間らしく生きる」と定義しているのですが、長野県内でフィールドワークやインタビューを行って、人間らしさの探究を行っていきたいと思います。
(取材・構成/上田直子)
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