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「地方が進んでいない」ことはない。地方は人との出会いと、キャリア成長の機会。

2022年度、塩尻CxO Lab第3シーズンに参加した、島畑知可子さん。地元の札幌市で社会保険労務士事務所を営みながら、塩尻CxO Labの副業人材となりました。

参加したのは、長野県売木村にあるコワーキングスペース&多世代型シェアハウスの「うるぎHalo! -岡田屋-」にまつわるプロジェクト。「人口約500人の村で、地域の可能性やおもしろさを感じられた機会でした。これをきっかけにして、私の地域との関わり方も変わっていきそうです。」と島畑さん。2023年8月からは「おためしナガノ」の制度を使って、札幌市と塩尻市の2拠点生活もスタートします。

副業人材として参加したきっかけや、副業内容、今後の2拠点生活などについて聞きました。

【プロフィール】
しまはた・ちかこ
北海道札幌市生まれ。社会保険労務士・キャリアコンサルタント。企業の人事労務に関する課題解決に10年以上携わる。現在は、企業への個別支援に加え、地方の企業と地域の持続可能な姿の実現に向けた面的な支援に取り組んでいる。好きなものは、お寿司とたこ焼き。趣味は美しい景色を見に行くこと。


長野県の関係人口として、アンテナを立てていた

――2022年度の塩尻CxO Lab に関わったプロジェクトについて教えてください。

参加したのは、2022年にオープンした長野県売木村(うるぎむら)にある、コワーキングスペース&多世代型シェアハウスの「うるぎHalo! -岡田屋-(以下、岡田屋)」でおこなわれたプロジェクトです。

売木村は、愛知県に接する長野県の南端にあり、人口約500人の小さな村。岡田屋は、村と村外の人や、企業・団体をつなぐ窓口的な場として誕生しました。アイディアが生まれた際には、行政とも連携しながら、実現を後押しする“地域の拠点”を目指しています。私は副業人材として、岡田屋の運営体制の強化や、企画に携わりました。

100年の歴史がある旅館を改修し、コワーキングスペース&多世代型シェアハウスとして生まれ変わった「うるぎHalo! -岡田屋-」(写真提供:うるぎHalo! -岡田屋-)

――塩尻CxO Labへ参加した理由を教えてください。

まず前年の2021年に、茅野市が主催したワーケーションモニターツアーへの参加を通して、長野県に惹かれたことから始まります。役所の方にアテンドしていただいて、いろんなところを訪れました。例えば寒天工場や味噌工場。蓼科湖畔の滞在施設では、ワーケーションをしながら過ごしました。

参加を通して、土地柄や、自然、歴史、食べ物などの魅力を体感。長野県をとても気に入りました。今後も、長野県に関われたり、長野県で仕事ができたりしたら嬉しいなと思いました。

ワーケーションをしながらの滞在を通して、その土地のもつ魅力を体感

――ワーケーションをきっかけにして、長野県に関心とつながりを持ったのですね。そこから、どのようにして「塩尻CxO Lab」参加にいたったのでしょうか?

まず「塩尻CxO Lab」を知ったのが、ワーケーションモニターツアーで繋がった、塩尻市関係人口の西宮竜也さんのFacebookです。「塩尻CxO Lab」をシェアしていたんですよ。「長野県に関われるのなら」と要項を見てみました。

▼塩尻CxOLab 副業人材募集記事:

そのなかで、いちばん気になったのが、この岡田屋のプロジェクト。売木村の人口500人のうち、4割が移住者というのも驚きで「どんな村なのか知りたい」と興味を持ちました。

また、仕様書から、強い想いを感じられたのも参加理由のひとつ。売木村の課題として挙げられるのは人口減少です。その対策として挙げられたのが、関係人口創出拠点である岡田屋の展開。この人口500人の村で、どう取り組んでいくのか興味を持ちましたし、岡田屋の想いにとても共感できました。

私自身の故郷である北海道も、郊外に行けば行くほど、人がいない・若者が出ていってしまうなどの課題を抱えています。「売木村に関わった経験が、北海道でも活かせるのではないか」とも考えました。

私の普段の仕事は、社労士としての人事分野の支援が中心ですが、人事の枠を超えた企業の支援もおこなっています。その経験をベースにして力になれるのではないかと思い、応募しました。

村の中心となる岡田屋で、魅力を活かしたイベントを開催

――副業は、どのようにおこなわれていきましたか?

12月に1週間ほど滞在した後、基本的には週1回のオンラインミーティングを実施しました。岡田屋の持続可能な展開を考えるために「どのように収益を出していくか」「売木村に対してどのように愛着を持ってもらうか」「岡田屋らしいイベントを開催できないか」などを一緒に考えていきました。

そのなかでも私は、イベントの目的の再確認や、やらなきゃいけないこと・やらなくていいことの確認など、現状の整理整頓をサポートしました。ほかにも、既存の良いものっていうのは、当事者になると見えにくくなることもありますよね。地域にある資源や、その背景の見つめ直しなども、一緒におこないました。

その土地ならではの魅力や資源を見つめ直す(写真提供:うるぎHalo! -岡田屋-)

――売木村の、既存の良いものとして、どのようなものが見えてきましたか?

やっぱり人と人との距離が近いことですね。私は札幌市に住んでいるのですが、近隣の住民との関わりなんて、ほとんどありません。それが、売木村だと気にかけ合う機会が多い気がします。私に対しても、よそ者扱いされる感じがしなかったので、居心地の良さを感じました。

――岡田屋で実現されたものを教えてください。

大きなもので言えば、3ヶ月の副業の集大成として、「うるぎ渓流釣り祭り」に合わせて交流イベントを開催しました。渓流で釣った魚を、岡田屋で炭火焼きにして、みんなで食べるイベントです。

うるぎ渓流釣り祭りに合わせた交流イベントの様子

地域の人と移住者、地域外から遊びに来た人たちが、一緒の空間で楽しめたのが、すごくよかったですね。子どもたちもたくさん来てくれましたし、地元のお母さん達も自家製の山菜の煮物などを持ってきてくれて盛り上がりました。そんな光景に、売木村村長も感動していたと聞きましたね。みんなで「おいしい」と言いながらシェアして食べられたのは、参加してくれた子どもたちにとっても良い経験になったんじゃないかと思います。

また、岡田屋はコワーキングスペースやシェアハウスとなっているので、これまで地元の方は足を運びづらいことも多少はあったと思います。それを取っ払って、岡田屋の雰囲気を感じてもらえたのも収穫でした。

居心地の良いコワーキングスペース(写真提供:うるぎHalo! -岡田屋-)

人に出会える地域のおもしろさ

――副業を通して気づいたことはありますか?

地域では、面白い人にたくさん出会えるということです。“地方は進んでいない”なんて言われますけど、私からみたら“進んでいない”ことは、決してないですね。

岡田屋があるのは、売木村の中心部。もともとは旅館でした。岡田屋になる前は10年ほど空き家状態でしたが、それが今や、明かりが灯って、村の人もくるし、そうじゃない人も来る。いろんな面白い人が集まる場になっています。そのような場で、今回のようなプロジェクトや、人の紹介が繋がっていきます。私も友人を北海道から招待したのですが、「長野って面白い土地だね」と言っていました。売木村の魅力に気付くきっかけも、人との繋がりが大きいと思います。

都市部に人口が集中していることから、地域には、非効率なことが多く残っているようにも思います。しかし、それは移住者なり関係人口が、改善に進むようなアクションでサポートできますよね。コロナ禍を通して、リモートで仕事をするのは当たり前となり、地方にも関わりやすくなりました。私たちがやれることは、たくさんあるように思います。

2拠点生活スタート。地域のプロジェクトに参画

――2023年8月から「おためしナガノ」の制度を使って、2拠点生活が始まりますね。

札幌市と塩尻市を拠点にして、長野県を「おためし」します。塩尻市は、「信州まつもと空港」と札幌市にある「札幌丘珠空港」を結ぶ直行便があるので行き来しやすいですね。

――「おためしナガノ」に参加しようと思った理由を教えてください。

副業を通して「働く場所は関係ない」ということに改めて気づいたんです。顧客とのミーティングはオンラインがメインのため、札幌市だけじゃなくて、違う場所で滞在してみても良いのではないかと感じました。これはもう、人生における実験みたいなものですね。

そして、これまで旅行はたくさんしてきましたが「住んでみたい」と思えたのが唯一、長野県。景色や、野菜の感じが、北海道とは違いますよね。標高が高いせいか、空気も澄んでいる気がします。それに、北海道の運転は真っ直ぐな道ですが、長野県のうねうねしている道も、なんだかいい。趣味の山登りにも適しています。

趣味の山登りを満喫

――どのような塩尻市滞在になりそうですか?

今決まっているのは、塩尻CxO Labの企画運営を担う「NPO法人MEGURU」の事業に携わることです。MEGURUは塩尻市を中心に、地域の中小企業が抱える人事やキャリア、採用領域の課題に取り組む団体。北海道も地方都市なので、やっぱり長野県と同じような課題を抱えています。その課題解決のために、先進的な取り組みをしている団体と出会えたのは、とても良かったですね。

私は、ひとりで事業を開始して10年ほど。これまでプロジェクトを組むことは、あまりありませんでした。しかし今後は専門家として、プロジェクトチームの一員として動くことになりそうです。このプロジェクトも自分も、どう変化していくのか、ワクワクしますね。

地方創生における取り組みは、持続可能な「事業」にすることが難しいように思います。しかし、必要性があり重要なものです。そういうものに積極的に関われる機会を持てたことは、私のキャリアの大きな成長機会だと感じています。

――今後の展望を、教えてください。

MEGURUの取り組みでは、地方の企業が抱える山積みの課題を、点ではなく面で課題解決するのが目的です。いい形にできれば、私の地元である北海道でも活用できるでしょうし、北海道に限らず、いろんな各自治体に展開できるかもしれないですね。

また、塩尻市の滞在では、塩尻市にあるコワーキング兼コミュニティスペースである「スナバ」を利用できるメンバー登録をします。面白そうなメンバーの方々と交流できるのも、楽しみにしています。

(取材・構成/竹中 唯)

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