塩尻CxO Lab現地フィールドワークvol.1~奈良井宿・木曽平沢エリア~
こんにちは、のりしお編集部・助っ人ライターの松井です。
今回は、2022年10月1日~2日に行われた関係人口コミュニティ「塩尻CxO Lab」の現地フィールドワークの様子をお届けします!
フィールドワークでは、「現地を訪れ、そこで活躍する地域プレーヤーと接することで地域の魅力や課題(=関わりしろ)を発見する」ことを目的に、伝統工芸・市内中心エリア活性化・空き家利活用・農業の4つのテーマを設け、数名のグループに分かれて市内各地を訪れました。
この記事では、伝統工芸をテーマに奈良井宿・木曽平沢エリアで行ったフィールドワークの様子をお届けします。
奈良井宿エリア
まず、塩尻駅最寄りのシビック・イノベーション拠点であるスナバに集合し、チェックインを行った後、チームに分かれて奈良井宿エリアに向かいました。
途中、ぶどう畑の景色が広がる道を通って塩尻の景色を感じながら、30分ほど車を走らせると奈良井宿エリアに到着しました。
奈良井宿でのランチ~こころ音のとうじそば~
到着した直後ではありますが、まずランチを取るため、信州の郷土料理である「とうじそば」を食べにお店へ。
「とうじそば」を知らない方のために補足すると、そばをつゆに浸ける事を「湯じ」といい、これが「とうじ」の語源と言われいるようですが、ひたし・あたためるという意味もあるようです。写真のような形で、そばをすくってつゆに浸ける体験自体が新鮮でした。
これから見てまわる奈良井宿の話や、参加者の方の登山の話など、会話が尽きることがない形でスタートしました。
その後、塩尻CxO Lab事務局の横山さんに解説いただきながら、奈良井宿を巡ります。
地域に眠る百の物語を伝える施設 ~BYAKU Narai~
少し次の予定まで時間があったため、急遽BYAKU Narai支配人の高山さんに施設の中をご案内いただけることになりました。
BYAKU Naraiは、創業1793年の酒蔵で⽊曽五⼤銘柄酒と呼ばれ、街のシンボルでもあった「杉の森酒造」と、 江⼾時代に奈良井宿の主産業であった「曲物」職⼈の住居から端をなし、近年は⺠宿として栄えた「豊飯豊⾐⺠宿」の⼆棟を、今回BYAKU Naraiのお宿として引き継いた形で運営されており、宿泊棟や浴場、レストラン、酒蔵などがあり、複数の業態で構成されています。
店内で木曽漆器を使っているため、お客さんが興味を持ち、直接木曽平沢の工房や添付に出向いたりする流れも起きているようで、宿泊客と木曽漆器や職人の方の橋渡しの役割を担うような場にもなっているようです。
旅する古物商 hito.to
その後、木曽の大橋の方向へ歩いていくと、倉庫にたどりつきました。
毎月25日周辺の数日間に「倉庫の日」と題して、倉庫を解放し古家具/建築古材/建具/板/什器/食器などの日本の古いモノや、海外買付アンティークにベトナム バッチャン焼きなど販売しているそうで、中には県外など遠方からいらっしゃる方もいらっしゃるようです。
今回は営業日ではなかったものの、たまたまスタッフのあさみさんが現場にいらっしゃったので、中でお話を伺うことができました。
最近では名古屋の百貨店などにも出店されているようで、都会の百貨店に出店するのと、この奈良井宿のような場所で販売するのでは、お客さんの購買行動も異なるという話もありました。
何回かいらっしゃっている方も、毎回来る度商品が入れ替わっていて、毎回新しい発見があるという風におっしゃっていました。
参加者の中には「これ買っても良いですか?」と早速購入しはじめるメンバーも。
まちを「また訪れたくなる場所」に ~土ーとおいちー~
次に、「土からうまれ土にかえる」をコンセプトに、木曽の職人さんたちが作り上げた一点ものの美しい工芸品を販売するお店「土ーとおいちー」を見学しました。
今回は、店舗にいらっしゃった佐藤あゆさん、オンライン上で佐藤布武さんにお話を伺いました。
「土ーとおいちー」では、職人さんの商品が売れた場合、売り上げ金額は全額職人さんのところへ入り、とおいちは職人さんにお貸しするスペースから収入を得るモデルになっており、それぞれの職人さんのスペースでの商品の入れ替えやレイアウトなどは職人さんが決める形を取っています。
このようなモデルから、布武さんの「職人さんが良いものをつくることで、儲かるような仕組みにしていきたい」という想いが強く伝わってきました。
また、「土」という言葉を使われている背景なども解説してくださいました。工芸品の木は土からうまれたものであり、色々な循環に中に我々がいる。そんな想いが布武さんの言葉や店内の掲示から伝わってきました。
立ち上げの際に実施したクラウドファンディングの文章を読み、コンセプトに共感してくださった木曽の職人さんを中心として、様々な商品が販売されています。今後、ECサイトの設置なども予定されているようです。
「通過する場所」と捉えている人もいるこの奈良井宿エリアを、「また訪れたくなる場所」にしたいという想いを布武さんが語られていたのが、印象的でした。
「楽しいことをみんなでやれると良いなと思います。地域に貢献していくことの気持ち良さがあるので、お金を得る以外にも価値を見出して、塩尻にも関わってくれると嬉しいです」というメッセージを最後にいただいて、布武さんのお話は終了しました。
木曽平沢エリア
その後、当初の予定には無かったですが、急遽奈良井宿から木曽平沢へ移動し、いくつか見学させていただきました。
木曽平沢の伝統的な街並みの中に佇む別荘 ~日々別荘~
日々別荘の家守である近藤さんがいらっしゃったため、急遽建物を見せていただきました。
別荘として昭和6年(1931年)に立てられた場所で、70年の時を経て改修されたことで、再び開くことになった場所で、和洋折衷の雰囲気が非常に印象的な建物でした。
宿泊も可能な建物でありながら、定期的にイベントも行われています。
江戸時代から代々続く漆器店 ~伊藤寛司商店~
ここから、木曽漆器のお店を2軒連続で見学させていただきました。
1軒目は伊藤寛司商店。
店内の商品に加え、裏側の製造過程も見せていただく中で、
・一定の湿度があることによって漆器を乾燥させることができる
・塗りの工程として、乾かしながら何度かに分けて塗っていくため、その分時間を要する
といった今まで触れてなかった漆器の製造過程についても学ぶ機会になりました。
伝統を現代の文脈で進化させる職人工房 ~丸嘉小坂漆器店~
少し歩いて、丸嘉小坂漆器店へ移動します。
3代目である小坂玲央さんも店舗にいらっしゃったため、直接お話を伺うことができました。
丸嘉小坂漆器店は、漆器の価値を高めていくために、「百式-hyakushiki」という自社ブランドを立ち上げられ、様々な挑戦をされています。
海外への輸出の実績も持っており、習慣としてフォークなどを使われる方のために、内側はガラスで、漆を外側のみに使うことで、より長く使ってもらえるような工夫をされているお皿の商品なども取り扱っています。
このような先進的な商品をつくられている背景には、木曽漆器業界の担い手が減っていっている現状に対して「木曽漆器に関わる人が一人でも増えてほしい」という小坂さんの想いがあります。
さらに「特に若い世代の方たちが、日常の中で漆に触れる機会がない」という問題意識から、漆硝子のアクセサリーを手掛けるなど、興味を持ってもらえるような人をいかに増やしていくか?ということを考えながら、商品開発を行う姿勢が印象的でした。
旧中山道沿いの隣り合わせの町でありながら、奈良井宿と木曽平沢の町や、並ぶ建物の雰囲気の違いも含めて興味深いポイントでした。
5時間弱の間に、沢山の方から沢山の話を聞いた参加者一同は、集合場所であるシビック・イノベーション拠点であるスナバに戻り、市街地にまた舞台を移します。
(文・写真 Takahiro Matsui )