関係人口の取り組みはキラキラしていてハードルが高い? 塩尻は違いました
「地域の取り組みに興味はあったのですが、専門スキルがない私にはハードルが高いと思っていたんですよ。でも、塩尻には私でも受け入れてもらえる場所がありました」
そう話すのは東京の人材会社に勤める田村志保さん。「塩尻ワインサークル」を始めとした、市でおこなわれている複数の活動に参加され、どっぷりハマっています。
「のりしおな人」第2回は、そんな田村志保さんに、地域外の人でもかかわれる塩尻の魅力についてお伺いしました。
(取材日:2022年1月18日)
【プロフィール】
たむら・しほ
佐賀県唐津市出身、同志社大学卒業。教育業界から人材業界へ転職して現在6年目。北関東・北信越の8県を担当し、地域プロモーション推進室リーダーとして「地域に必要とされる人材会社・人材サービス」をテーマに日々営業活動中。ワインエキスパート資格を保有。
ワインサークルに参加。楽しみながら事務局の仕事もお手伝い
ーー塩尻ワインサークルに入っているそうですね。どんなサークルなのですか?
塩尻は明治から続く国産ワインの産地の一つ。なのに、塩尻のワインは世の中にあまり知られていません。その魅力をもっと世の中に広めていこう、という目的で、2020年10月に発足した市公認のサークルです。
ワインに詳しいYouTuberさんやワインの味わいを可視化するシステムの開発者さん、塩尻の農業ベンチャーの経営者さんが中心となって運営しています。
私は発足当初から参加していまして、参加メンバーの管理や連絡といった事務局のような仕事をしています。
ーー具体的にはどんな活動をしているのですか?
塩尻のワイナリーの方をゲストにお招きしたウェビナーを月1回開催しています。
ゲストのワイナリーさんでつくられたワインの小瓶セットを参加者の皆さんにお送りして、試飲をしながら、ワイナリーの方にワインづくりの方法やワインに対する思いなどをお聞きするんです。
ワイン畑の中継もしますし、直接質問もしていただけます。
他にはないコンテンツが1時間半にギュッと凝縮されていて、毎回素晴らしい内容なので、とにかくいろんな人にご参加いただきたいですね。この企画をお手伝いできるのは、すごくやりがいがあります。
また、インスタグラムで塩尻ワインの情報を発信しています。順調にフォロワーさんが増えていまして、今では1000人を超えました。
▼shiojiri wine circle インスタグラム
そして、2022年には、「コミュニティヴィンヤード」を立ち上げました。クラウドファンディングで参加してくださるメンバーを募って、ワイン用ぶどうの畑をゼロからつくるというプロジェクトです。3月から塩尻の畑で、メンバーの方と一緒に畑づくりをするのが、今から楽しみですね。
1泊2日の体験で、関わらずにいられなくなった
ーー塩尻ワインサークルにはどのような経緯で参加するようになったのですか?
そもそもの発端は、2019年に、いま勤めている人材会社のイベントに、塩尻市役所の山田崇さんに登壇していただいたことです。
それが縁で、山田さんにアテンドしていただき、会社の同僚数人と一緒に、塩尻のミステリーツアーに連れていっていただきました。
もともと地域創生に興味があり、会社に希望を出して北信越エリアの担当にしていただいたところだったので、すごく興味があったんですね。
そのミステリーツアーが、想像したよりもはるかに濃密な内容だったんです。
ワイナリーや木曽漆器のお店の見学はもちろん、大学生が塩尻でおこなっているプロジェクトの発表会を見て、その夜にワインnanoda(※月1回、塩尻市内の空き家で催されるワインイベント)に参加。
そこで、市役所の方や地域おこし協力隊の方、大学生の皆さんとワインを飲みながら、初対面なのに地域について熱くディスカッションしていました。さらにスナックでその話の続きをしながら、ワインを何本か開けて。
単に観光地をめぐるだけでなく、地域コミュニティに参加して、強烈な個性の人たちと話したことが、とにかく強烈な体験だったんです。塩尻には他にも何かいろいろなものが詰まっていそうだと感じ、ちょっと関わらずにはいられなくなりました(笑)。
そこから、塩尻に関するさまざまなイベントやコミュニティに参加するようになりました。
関係人口ラボ、CxoLab、複活…。どんどん沼にハマる
ーーすぐにワインサークルに参加したのですか?
まずは山田崇さんが参加しているオンラインイベントに参加しました。その一つが、毎週土曜日の朝に開催されている「オンライン関係人口ラボ」。塩尻だけでなくその他の地域の話も聞けることが面白くて、毎週参加するようになりました。
次に参加したのが、2020年にスタートした「塩尻CxO Lab」です。
いくつかテーマがあったなかから、私は、ワインの味わいを可視化する「WaiNari」というシステムを活用してワインの販路を拡大する、というテーマを選択。テーマオーナーや参加メンバーのみなさんと、副業人材を募集するためのプロジェクトの仕様書を作成しました。
すると、その流れで、ワインサークルの前身のような取り組みに関わらせてもらいまして。自分が好きなワイン×塩尻に関われるのがめちゃくちゃ嬉しくて、ますますハマりました。
ーー段階を踏んで、ワインサークルに参加されたのですね。
さらに、2021年には「複活」という副業プロジェクトにもエントリーしました。塩尻という場所を違った角度から見てみたいなと思ったんですね。金属加工業の大沼製作所さんに運良く採用していただき、「のりしおな人」でもご登場されていた甲さんと一緒にプロボノをしています。
「CxoLab」の第2期にも参加して、他のメンバーと協力して、塩尻駅前観光センター売店のリバイバルプロジェクトの仕様書も作成しました。
高いスキルがなくても参加できる、さまざまなステージがある
ーー骨の髄まで塩尻にどっぷり浸かっていらっしゃいますね(笑)。さまざまな活動に参加されてみて、改めて良かったなと感じることはどんなことですか?
まずは、純粋に楽しいと思える時間が得られることですね。本業があるなかで塩尻の活動に参加するには、工夫して時間を捻出する必要があるのですが、それでも参加してよかったなと毎回100%思っています。
また、背伸びしてチャレンジしたことで、自分の身長がちょっとだけ伸びたと体感できたことも嬉しかったですね。
今でこそ、塩尻のさまざまな活動に参加していますが、以前は、そういう地域の活動に参加するのはハードルが高いと思っていたんですよ。
ずっとかかわってみたかったのですが、私は専門スキルがないので、どう役に立てるかわからない。
一部のキラキラした人だけが参加できるものであり、自分に居場所はないと思い込んでいたんです。
ところが、塩尻には、私のように高いスキルがない人でも参加できる、大小さまざまなステージが用意されていました。
参加すると皆さんが受け入れてくれて、ちょっと背伸びをして意見を言ったりお手伝いをしたりすると、持ち上げてもらえたりもする(笑)。
そうするうちに、ちょっとだけ身長が伸びたことを体感できるので、もうちょっと背伸びしてみようと思う…。
そんなふうに、塩尻は、徐々にステップアップしていけるステージの作り方や受け入れ方がすごく上手なんだと思います。
尊敬できる先輩方や同志にオンラインで出会える
ーー成長できる環境があるわけですね。
成長できる環境ということでいえば、尊敬できる先輩方というか、同志のような方々にたくさん出会えたことも大きかったです。
「塩尻」というワードのオンラインイベントに顔を出していると、さまざまな出会いがあるだけでなく、「この人とこの人がつながっていた」というように、人同士がどんどんつながってきて、さらに親しくなれます。
そうしてオンラインで何度も顔を合わせている方とリアルでお会いすると、結束力がすごい。親しくなった方々とは、東京で何度も飲んでいます。いろいろアドバイスをしあったり応援したり、と高め合う感じがすごい。皆さんが前向きすぎて、私は後ろを向けなくなりました(笑)。そんな方たちと出会えるのも塩尻とかかわる魅力だと思います。
「私なんかが入って大丈夫?」に「全然大丈夫」と答えたい
ーー多くのことを得られていますね。
あまりに多くのことをいただいているので、最近はもらってばかりではいけない、塩尻のために求められる役割を果たしたいという思いが強くなっています。
何ができるかわかりませんが、まずは、「関わりたいけど関われない」と思っている人が、塩尻にすっと入り込めるような役割を果たせればと思っています。
というのは、塩尻の話をすると、「私なんかが入っていって大丈夫なんでしょうか?」と聞かれることがよくあるのです。
2、3年前の自分のように、キラキラしている人しか入っていってはいけない、と思っている人は意外と少なくないんですよね。
そうした人に「全然大丈夫ですよ」と背中を押してあげられればと思います。
あとは、塩尻で学んだことを生かして、他の地域でも何かやってみたいと考えています。
ただ、その目的は、他で得た経験やノウハウを塩尻に持ち帰ってきて、何かのお役に立つこと。土台はあくまで塩尻にあります。
塩尻は、良い意味で「予想してもムダ」
ーー結びに、塩尻にまだかかわっていない方にメッセージをいただけますか。
塩尻はかめばかむほど味が出るみたいな場所。とっかかりはどこからでも良いので、興味を持ったことや人にかかわってみてはいかがでしょうか。
すると、そこからどんどん活動が広がっていき、自分の興味やつながりを広げられたり、好きなことにチャレンジできたりするはずです。
1年前には思いも寄らない出会いや出来事が次々と起こるのが塩尻です。良い意味で予想してもムダなので(笑)、気軽に片足から踏み入れてみると良いですよ。
(取材・構成/杉山直隆)
塩尻ワインサークルや複活の他にも、塩尻には市内だけでなく市外の皆様にも関わっていただけるような、さまざまなプロジェクトがあります。
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