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「DAOでは、スキルよりも”共感”でつながりたい。」ストーリーを通じて、人を巻き込んできたクラフトビール

2024年5月1日、「関係人口」と「地域事業者」がオンラインでつながる分散型自律組織「塩尻DAO(しおじりダオ)」の実証実験がスタートしました。のりしおでは「塩尻DAO」に参加する地域事業者を紹介していきます。

今回紹介するのは、塩尻市特産品のブドウ「ナイアガラ」を活用したクラフトビール「ナイアガラホップ」を開発・販売している「株式会社たのめ企画」です。塩尻で明治時代から栽培されている歴史あるブドウがこれからも継承されていくように、「ナイアガラ」にビールという付加価値をつけて「ナイアガラの魅力を知ってくれる人を増やしたい」と、現役塩尻市役所の職員を筆頭に事業がスタートしました。

クラウドファンディングや販路拡大、イベント出店などを通して、だんだんと活動規模が拡大。日本国内で醸造されるビールに特化した審査会「ジャパン・グレートビア・アワーズ2024」にて金賞を受賞しました。「みんながナイアガラホップの持つストーリーをおもしろがってくれた結果だと思っています。」と語るのは塩尻市役所の職員であり、「たのめ企画」の共同創業者である三枝大祐さん。

「DAOでは、スキルよりも共感でつながることを期待します」という三枝さんに、これまでに多くの協力者を巻き込んできたエピソードや、マッチングとDAOの違い、DAOを通して叶えたいことなどを伺いました。

【プロフィール】
株式会社たのめ企画
「土着の地域資源を未来につなぐ」を事業が生み出すインパクトに据える、塩尻市役所職員2人が創業したローカルゼブラ会社。塩尻で明治時代からさまざまな必然性のもとで栽培されてきたナイアガラというぶどう品種を未来へつなぐべく、果汁を50%以上使いナイアガラの魅力を前面に押し出したビール「ナイアガラホップ」の企画販売が主な事業活動。他、ナイアガラアイスの企画販売や、コンコードというぶどうを使ったビールの企画販売も検討中。

偶然なる酒の席から始まったナイアガラホップ

――「たのめ企画」が取り扱う「ナイアガラホップ」がスタートした経緯について教えてください。

元々共同創業者が、ナイアガラの売値の安さに課題を感じていました。食用だとシャインマスカット、ワイン用だとシャルドネといったヨーロッパ品種に高値がつき、相対的にナイアガラの売値が安くなってしまうのです。ナイアガラが本当に好きで、何よりも美味しいぶどう品種だと彼は感じていたからこそ存続させたいと思っていました。

塩尻で古くから栽培されてきたぶどう「ナイアガラ」

そんななか、たまたま伊那市の酒場で、県内で最も老舗のクラフトビールメーカー「南信州ビール」の醸造家である竹平さんと隣になりました。南信州ビールがつくるフルーツビールを飲みながら、「ナイアガラでビールを作れないか」と話し、意気投合したことから始まりました。

竹平さんが協力してくれた理由は「だって面白そうじゃん、まず公務員が取り組もうとしていることに夢があるから」とのこと。収益性のみを求めるのではなく、地域資源を未来に繋げたいという社会性も両立するビジネスであり、想いを持った公務員が手掛けるという新規性を面白がってくれています。ありがたいですね。

――三枝さんはどのようなキッカケで参加されたのでしょうか?

前述の居酒屋で話が盛りあがった後、竹平さんから共同創業者のもとに、事業を前向きに検討したいというメールが届きました。かなり具体化されていたことから、最低生産ロットの詳細や、どんなブランドで販売するかについてなど「全然わからないから相談したい」と共同創業者から私のもとに話がきました。

私は塩尻にあるシビック・イノベーション拠点スナバで、新規事業の立ち上げを支援した経験があったので、「新しいことを抵抗なく聞いてくれるだろう」と思ってくれたみたいです。私もナイアガラでビールを作るという企画そのものにワクワクして、「やりましょう!」と勢いがついていきました。

まずは生産までのサプライチェーンの確立を模索し、ナイアガラの果汁を絞る加工所にお声がけをして企画をプレゼンして協力を求めました。また、つながりのある農家さんへナイアガラを分けていただけないかとお願いしました。

ナイアガラ収穫の様子

搾汁をお願いした加工所で販売しているナイアガラジュースを元に試作をおこない、2回の試飲会を経て味を決めたのち、ラベルやWebサイトや販促ツールのブランディングやデザイン検討などを経て、2022年に株式会社を創業しました。

――2022年秋におこなった事業資金の支援を募るクラウドファンディングは、最終的に目標金額の176%を達成しましたね。

スナバのメンバーにクラウドファンディングやホームページ作成を協力してもらって、初年は1,600本を出荷することができました。現在では地域の飲食店や観光センター、「銀座NAGANO」にもナイアガラホップを置いていただき、2024年の生産本数は8,000本と成長。地域のみなさまや、ナイアガラを生産する農家さんからも、私たちの活動にご期待いただいていることを実感しています。

▼280万円以上の資金を集めたクラウドファンディング:

ストーリーに共感して、人が集まる

――「たのめ企画」の、今後の目標を教えてください。

ナイアガラという地域資源が未来へと継承されていくことを目指して、当面の目標は今の生産本数が安定的に販売できるようにすることです。そのためには、販路の新規開拓ももちろんですが、なによりナイアガラホップのストーリーや味を好きになってくれる、コアなファンづくりをおこなっていきたいと考えています。

また、思いつきですが角打ちのようなイベントの開催ができればいいなと思ってます。私たちのようなお酒を売る会社や、それを提供する飲食店や酒屋を支えるのは、最終的にお酒を飲んでくれる人たちです。お酒に向き合いながら、そのお酒が持つ産地や生産者、ストーリーに想いを馳せながら飲むカルチャーを醸成することで、この地域のお酒に関わるバリューチェーン全体が発展していきたい。地域における産業や経済という視点も入れてながら、事業を作っていきたいです。

このような大きな目線も入れつつ、足元ではナイアガラに新たな付加価値をつけることを見据えたナイアガラアイスの開発や、ナイアガラと同じく明治時代から栽培されているコンコードのビールの開発など、ぶどうという地域資源を未来につなぐ事業展開をしていきます。

――いろんな人が協業してここまで成長できたのではないかと感じます。なぜいろんな人を巻き込めたのでしょうか?

地域資源であるナイアガラの価値を高めようと活動するストーリーに、共感をいただいている部分が大きいと感じています。

正直なところ、ナイアガラホップはただのビジネスとして捉えるのであれば、スケールが難しいモデルだと思います。クラフトビールがブームになるなかで美味しいビールを作る方は沢山いらっしゃいますし、そのなかでナイアガラホップは確かに美味しいけれど、値段を高く設計しています。また、ぶどうの収穫量や加工所のキャパシティで生産量が規定されるので、大量に生産するにはかなりハードルがあります。

こういったクセのある商品ではありつつも、「面白そうじゃん」「応援してるよ」と言って購入いただく方もいらっしゃいますし、扱ってくれる地元の飲食店の方もいらっしゃいます。それは私たちが真剣に想いを持って、時には苦悩しながらも前向きに楽しそうに事業をしているところが見てくれているから。そしてパーソナリティまで含めて、やりたいことや想いも分かってくれているのです。同じように「この地域に何ができるのか」という問いを大事にしている人たちと相性がいいんだと思っています。

スキルでつながるジョブ型マッチングと、共感でつながるDAOの違い

――たのめ企画が、DAOに期待することを教えてください。

DAOは、もうすでに「塩尻で何かやりたい」をフックにして集まっているメンバーばかりです。そのような価値観やバイブスがすでに基盤としてあるような、信頼感があるなかでチームを組めそうな気がしています。

誰かと一緒にプロジェクトをやる時って、そのような価値観や期待値のすり合わせ、信頼関係の醸成といったチームアップに、かなりのエネルギーと時間がかかります。それに比べてDAOは、安心感やスピード感を持ってプロジェクトを推進できるように思います。

――たのめ企画で活動するのは、どのような方が合いそうですか?

まずは、直近の目標であるコアなファン作りや販路拡大について興味があると嬉しいです。ナイアガラホップは、商品単体というよりは、背景にある産地やストーリーを伝えてこそ、ファンや取り扱う事業者の方が増えていくものだと思っています。だからこそ、私たちの事業やストーリーへの共感、そしてそれを広めていきたいと思う方がピッタリ合うんじゃないかと思います。

また、アドバイザー的に伴走いただくよりは、実際に手を動かしたり実行するところまで一緒にやるような「チーム」になっていただけると嬉しいです。正直なところ、うちは全員副業なので本業以外の時間でしか事業ができず、割けるリソースが少ないのが現状。そのため、具体的な企画運営まで一緒に動いていただける方とチームになっていきたいと思っています。この前は横浜高島屋での試飲販売の際に、DAO運営メンバーが現地に来て一緒に販売してくれました。あれは本当に助かりましたし、嬉しかったです・・・!

横浜高島屋での試飲販売にはDAO運営メンバーも現地にかけつけてくれた

――「販路拡大」と聞くと「営業職」を求めているようにも聞こえますが、いままでの話から求められるのは、営業に限定されたジョブ型の仕事ではないのかもしれません。

スキルではなく、想いへの共感が前提になっているのが、いままでのスキルマッチングとDAOの違いでもあるのかもしれませんね。DAOでは「スキルを試したいから参加する」「コンサルティングのような提案をする」は違う気がしています。

事業内容だけではなく、私たちのパーソナリティーを面白がっていただき、バックストーリーに共感いただき、そして私たちの持つ欠点とか弱点も承知で面白がってくれると、楽しく愉快に長くご一緒できる気がしています。なんなら飲みにいかないと、お互いに見極められないのかもしれない…。とりあえず1回飲みに行こう!と誘いたいですね。

(取材・構成/竹中唯)

▼ナイアガラホップはたのめ企画のHPから購入できます!:


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